●藤原　啓（ふじわら けい）

（1899年2月28日～1983年11月12日）

日本の陶芸家で、1970年に人間国宝に認定された。

本名は敬二。藤原雄は息子である。

岡山県備前市穂浪（当時の和気郡伊里村穂浪）出身で農業藤原伊三郎、世為の三男として生まれる。

少年期から俳句や小説の才能を発揮しており、1915年に博文館が手掛ける「文字世界」に応募した短編が1等を獲得する。

これを機に1919年に上京し博文館編集部に勤務し『文学世界』の編集を担当する。

同郷の正宗白鳥、徳富蘆花の影響を強く受け詩の執筆も始める。早稲田大学英文科の聴講生となり、ロシア、ドイツ文学やシェイクスピアを学ぶが、1年あまりで中退する。

その後は川端洋画研究所に通い、3年間デッサンを学んでいる。

1922年に詩集「夕の哀しみ」を出版。

1928年に「ハイネの訳詩集」（生田春月と共著）を新潮社より出版。博文館の「婦人之国」の編集にも携わっている。

1930年に博文館を辞め作家として独立するが自己の文学に限界を感じ強度の精神衰弱に陥る。

1937年に文学を断念し帰郷。

1938年に近隣に住む正宗白鳥の弟で万葉学者の敦夫の勧めで、三村梅景に師事し備前陶芸の道を歩み始める。当時40歳という遅いスタートであるが、1948年に国認定の技術保存資格者（丸技）の資格（備前焼では他に金重陶陽、山本陶秀のみ）を受けたのを機に作陶への生涯を決意する。金重陶陽や北大路魯山人らからも指導を受け、技術向上に邁進した。特に金重陶陽が先駆となった古備前復興の継承に尽力し、桃山古備前の技法を基礎にしながらも、窯の中での自然の変容を生かした近代的な造形が特徴である。師である金重とは対照的で素朴で大らかな作品が、古くから受け継がれた備前焼の新たな展開を示し、後進へ大きな影響を与えた。

1954年に魯山人の斡旋で日本橋高島屋にて個展を開く。同年、岡山県指定無形文化財「備前焼」保持者に認定。

1958年に日本工芸理事に就任。

1962年にプラハ国際陶芸賞を受賞した。

1970年4月25日に重要無形文化財「備前焼」保持者に認定。

1972年に勲四等旭日章を受章。

1976年に備前市名誉市民となる。同年備前市には財団法人藤原啓記念館が設立されており、藤原啓自身の作品や数々の古備前を展示している。

1983年に肝臓ガンのため岡山大学付属病院にて逝去。同日、勲三等瑞宝賞を受章した。